Linux* カーネルの解析を有効にする

カーネルとシステム・ライブラリーのパフォーマンス解析を成功させるには、次の手順に従ってください。

  1. カーネルのモジュール解決を有効にします。

  2. 使用中の Linux* システムのバージョン用のデバッグ情報パッケージをダウンロードしてインストールします

  3. デバッグ情報付きで Linux* カーネルをビルドします。

カーネルのモジュール解決を有効にする

Linux* カーネルのパフォーマンス特性の精度を高めるため、インテル® VTune™ プロファイラーは /proc/kallsyms ファイルで提供されるカーネルモジュール情報を必要とします。そのため、/proc/sys/kernel/kptr_restrict ファイルに /proc/kallsyms の読み取りを許可する値が含まれ、カーネルポインターに非ゼロが与えられていることを確認してください。

詳細は、http://lwn.net/Articles/420403/ (英語)、http://man7.org/linux/man-pages/man7/capabilities.7.html (英語) を参照してください。

kptr_restrict を非ゼロに設定してカーネルポインター情報が明示的に隠匿されている場合、ハードウェア・イベントベース解析の結果にカーネルモジュールからの関数が含まれない可能性があります。それらの関数の CPU 時間は、[既知のモジュール外] に関連付けられます。現在のセッションでこの問題を解決するには、インテル® VTune™ プロファイラーを開始する前に /proc/sys/kernel/kptr_restrict ファイルに 0 を設定します。

sysctl -w kernel.kptr_restrict=0

インテルのサンプリング・ドライバーを使用せずに perf 経由でカーネルのプロファイルを有効にするには、perf_event_paranoid 値を 1 以下に設定します。詳細については、Linux* カーネルのドキュメント (英語) を参照してください。

インテル® VTune™ プロファイラーは、Linux* カーネルのシンボルを解決するため、カーネルビルドの際に作成されシステムとともに提供される System.map ファイルを使用します (デフォルト)。ファイルがデフォルト以外の場所に配置されている場合、ターゲットのプロパティーを設定する際に、[バイナリー/シンボル検索] ダイアログボックスで検索ディレクトリーのリストに追加する必要があります。

/proc/kallsymsSystem.map ファイルの設定は、インテル® VTune™ プロファイラーのカーネルシンボル解決を有効にし、カーネル関数とカーネルスタックを表示しますが、アセンブリー解析は利用できません。

デバッグ・カーネル・バージョンのダウンロードとインストール

Linux* オペレーティング・システムのインストール後、カーネルは vmlinuxvmlinuz、または bzImage/boot を実行します。Linux* ベンダーは一般に、シンボルがストリップされた圧縮カーネルを提供しています (vmlinuz または bzImage)。vmlinux は、非圧縮の Linux* カーネルですが、デバッグ情報を含んでいません。そのため、デフォルトではインテル® VTune™ プロファイラーはこのカーネルからカーネル関数情報を取得できません。カーネル内で取得されたすべてのホットなアドレスの関数やモジュール名は [vmlinux] のように角括弧でモジュール識別子を表示します。一部のベンダーは、パフォーマンス解析に適したカーネルの特別なデバッグバージョンを提供しています。

  1. Linux* カーネルのバージョンを確認するには、uname -r コマンドを使用します。

  2. システムに対応する 2 つの RPM をダウンロードしてインストールします。
    kernel-debug-debuginfo-*.rpmkernel-debuginfo-common-*.rpm
    次のいずれかの方法で行うことができます。

    • インストール CD や DVD から RPM を検索します。例えば、SUSE* Linux* Enterprise Server 9、10、および 11 では、「debug」カーネル RPM (kernel-debug-*.rpm) は、インストール CD またはウェブサイトで提供されます。RPM のインストール後、デバッグバージョンのカーネルファイルは、/boot/vmlinux-*-debug または /boot/vmlinuz-*-debug に配置されます。手動で gunzip ツールを使用して、カーネルファイルを展開する必要があります。

    • OS ベンダーの FTP サイトなどから、パッケージをダウンロードします。例えば、Redhat* Enterprise Server のパッケージを取得するには、ftp://ftp.redhat.com/pub/redhat/linux/enterprise/5Server/en/os (英語) を検索します。

    • インターネット上でほかの提供元を検索します。例えば、Red Hat* Enterprise Linux* 3、4 および 5 では、debuginfo RPM が http://people.redhat.com/duffy/debuginfo/ (英語) で提供されています。RPM のインストール後、デバッグバージョンのカーネルファイルは、/usr/lib/debug/boot (EL 3) または /usr/lib/debug/lib/modules (EL 4、5) に配置されます。

  3. 次のコマンドを使用して RPM をインストールします。

    rpm -ivh kernel-debuginfo-common-*.rpm
    rpm -ivh kernel-debug-debuginfo-*.rpm

    いくつかのオペレーティング・システムでは、パッケージをインストールする際に yum を使用します。次に例を示します。

    yum --enablerepo=rhel-debuginfo install kernel-debuginfo
  4. パッケージがインストールされたことを確認します。次に例を示します。

    rpm -qa|grep kernel
  5. インテル® VTune™ プロファイラーのターゲット・プロパティーを変更し、[バイナリー/シンボル検索] ダイアログボックスで圧縮されていないカーネルバイナリーへのパスを追加します (例: /usr/lib/debug/lib/modules/2.6.18-128.el5debug/)。

デバッグ情報付きで Linux* カーネルをビルド

  1. カーネルのソースを設定します。

  2. カーネルソースの最上位の Makefile を編集し、次の変数に -g オプションを追加します。

    CFLAGS_KERNEL := -g

    CFLAGS := -g

  3. 次に make clean; make を実行して、デバッグ情報付きで vmlinux カーネルファイルを生成します。デバッグバージョンのカーネルが作成または取得されたら、パフォーマンス解析中に使用するカーネルファイルを指定します。

カーネルモジュールのデバッグ情報が利用可能になると、すべての解析実行においてカーネル関数が適切に表示されます。新しいシンボル情報と収集したデータが一致していない場合、プロジェクトの [検索ディレクトリー] を更新し、変更を適用するため [再解決] ボタンをクリックします。

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