Elastic Games が AAA の Triple-I ゲームを制作

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この記事は、インテル® デベロッパー・ゾーンに公開されている「Elastic Games* Creates Triple-A Quality in a Triple-I Game」(https://software.intel.com/en-us/articles/elastic-games-creates-triple-a-quality-in-a-triple-i-game) の日本語参考訳です。


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『Last Year』で殺人鬼と対戦する高校生
図 1. 『Last Year*』で殺人鬼と対戦する高校生
(イメージの出典: Elastic Games)

高校生たちが恐ろしい殺人鬼と対戦するスリリングな非対称対戦ホラーゲームで、インテルのテクノロジーが採用されています。

『Last Year』の幕開け

Elastic Games の新作『Last Year』 (https://lastyearthegame.com/) は、プロセスを強化しビジュアルを向上するツールとテクノロジーを利用して制作された、『Dead by Daylight*』や『Friday the 13th*』のようなマルチプレーヤー・ホラー・ゲームです。

このゲームは、インディーゲームの境界を広げることを想定して制作されました。制作総責任者の Justin Vazquez 氏は次のように述べています。 「我々には、Triple-I スタジオである Elastic Games が、洗練度、プロダクション・バリュー、ゲームプレイ、時間ごとのリテンション率に関して AAA 品質のゲームを制作するという構想がありました。そして、我々はインディーカルチャーの開発プロセスと自分たちで何とかするという精神でそれを実現したいと考えていました。」 (「Triple-I」は、大手スタジオの AAA 格付けに相当するインディーゲーム市場の格付け (英語) です。)

カナダのモントリオールとケベック・シティー周辺の IT ルネッサンスは、世界中から多くのゲーム開発者を含む才能とリソースを引き寄せました。EA、Ubisoft、Gameloft、そして Bethesda Softworks はすべてこの地域にあり、スタートアップ企業も集まっています。モントリオール大学を卒業した Justin Vazquez 氏にとって、モントリオールのマイル・エンド地区にある Elastic Games に入社したのは自然なことでした。

Justin Vazquez 氏は次のように語っています。

「10 年以上前にゲーム業界に参入しました。元々は映画やテレビで、サウンドデザイナー、作曲家、時にはプロデューサー、脚本家、ディレクターをしていました。ビジュアルアーツに携わりたかったため、それならば映画と TV だと考えたからです。ビデオゲームは全く眼中にありませんでした。

しかし、エンターテインメントの未来はゲームであると考え、ゲーム業界に興味を持ちました。Behaviour Interactive などの企業でサウンドデザインを担当するかたわら、制作やゲームの開発方法についてできる限りのことを学びました。

そして、EA でプロジェクト・マネージャーとなり、WB Games Montréal でプロデューサーとなりました。大きな AAA タイトルだけでなく、期限の厳しいインディーのような小さなタイトルにも携わる機会がありました。さらに、アップデートや修正を提供して常にゲームをサポートする、ライブ・プロジェクトも経験しました。

Elastic Games のメンバーが『Last Year』を見せてくれたとき、私はすぐにファンタジーの魅力に気付き、彼らが何を目指しているのかを理解しました。そして、これは我々の専門知識をすべて集結する機会だと考えたのです。」

Elastic Games の CEO 兼創設者兼クリエイティブ・ディレクターの James Wearing 氏と同社のテクニカル・ディレクターの Alex Halchuk 氏も Justin Vazquez 氏と同様のバックグランドを持っていました。どちらも AAA タイトルと小さなインディー・プロジェクトの制作経験がありました。

「我々は、『Last Year』の制作可能な最高のバージョンと、それを実現するための最良の開発モデルを比較検討しました。」と Justin Vazquez 氏は述べています。

エンターテインメント要素

ビデオゲームのカンファレンスで、Justin Vazquez 氏はプレイするために並んでいるのと同じくらい多くの人がアクションを見るために並んでいることに気付きました。このエンターテインメント要素こそ、Elastic Games がゲームに組込もうと懸命に取り組んでいるものです。

Justin Vazquez 氏は、次のように振り返っています。

「James がこのタイトルの Kickstarter* を始めたとき、『Dead by Daylight*』も、『Friday the 13th*』もまだなく、これは非常に斬新でした。彼は、これまでに見たホラー映画から、切り裂き魔、モンスター、野蛮人など、記憶に残る驚くべき瞬間を再現しようとしていました。そして、それらをゲームプレイ・システムに組み入れることで、プレーヤーが自分で再現できるようにしました。

プレーヤーが殺人鬼と対戦できるのは素晴らしいことです。たくましい青年として野球のバットで殺人鬼を倒すことができたら、面白いでしょう。あるいは、オタクとして殺人鬼を倒しても、それは記憶に残るでしょう。」

『Last Year』の殺人鬼
図 2. 『Last Year』の殺人鬼が無敵に見えることはゲームプレイにとって重要
(イメージの出典: Elastic Games)

インディー開発モデル

Justin Vazquez 氏は、次のように述べています。

「素晴らしいツール、エンジン、サポート・ソフトウェアを利用することで、創意工夫、ノウハウ、賢明な計画は必要ですが、小規模なチームで高品質のゲームを制作することが可能です。

多くの才能と多くの AAA スタジオがあるモントリオールでは、このアプローチがますます増えています。開発者は、創造のコントロールと創造の自由を望んでおり、これらのテクノロジーを使用して独自のスタジオを立ち上げ、非常に高品質のタイトルを制作しています。」

Justin Vazquez 氏、James Wearing 氏、および Alex Halchuk 氏の経験を合わせると、EA、WB Games Montréal、Ubisoft、Square Enix での開発経験があります。

「異なる AAA スタジオ間、あるいは AAA 内でもさまざまなアプローチがあります。PC またはコンソールの場合、2 つのアプローチがあります。1 つは安価で優れたモデルで、100 ~ 500 人のチームが数年かけて 1 つのタイトルに取り組みます。例として、EA、WB Games Montréal、Eidos が挙げられます。Eidos の『シャドウ オブ ザ トゥームレイダー』は 200 人以上のチームで制作されました。もう 1 つは、Ubisoft に代表される、製作期間が短く優れたモデルです。彼らは世界中にスタジオを所有しており、1 つのタイトルに数千人が関わっています。これらすべてのチームを活用して、非常に高品質のタイトルを定期的に制作することができます。

Elastic Games では、26 人のチームで AAA 品質のタイトルを制作し、新しいコンテンツやアップデートなどのサポートをリリース後に提供しています。つまり、サービスとしてのゲーム (GaaS: Games as a Service) モデルです。これを行っているインディーチームはごくわずかです。

小規模なチームで高品質のコンテンツと機能を制作する鍵は、どこに焦点を当てるか賢明に判断することです。一度にすべてをやろうとすると、複雑になりすぎて注意散漫となり、思うような結果が得られません。業界のロールモデルである Bethesda Softworks のディレクターの Todd Howard 氏は、ビデオゲームの中で次のように述べています。

「私たちは何でもできますが、すべてを行うことはできません。」

Elastic Games のように小規模なチームにとってこれは二重の意味で重要です。我々は、どこに焦点を当てるかに注意し、市場のほかのタイトルと同等になるためだけに、一度にすべてをやろうとする誘惑に抗う必要があります。

テクノロジーとインテルの役割

開発ツールを使用すると、複数のプログラマーをゲームのある側面に注力させることができます。Justin Vazquez 氏は、次のようにコメントしています。

「我々は、大規模なチームよりも機敏に動けるという事実を活用する必要があります。機能設計してできるだけ迅速にゲームに取り入れ、このプロセスを可能な限り繰り返します。

弊社のテクニカル・ディレクターは、インテル® NUC を大変気に入っています。自席にあるこのミニ PC を利用して、多くの機能を非常に迅速に反復、検証、デバッグしています。彼は、技術およびアーキテクチャーの観点から、すべての機能に関与しています。インテル® NUC は、作業を素早く正確に行うのに役立っています。これは、我々のように小規模なチームが高い品質を達成する上で重要です。」

『Last Year』の動きの速いシーン
図 3. インテル® テクノロジーを採用した『Last Year』の動きの速いシーン
(イメージの出典: Elastic Games)

Justin Vazquez 氏は、次のように強調しています。

「ゲームのすべての部分 (アート、アニメーション、サウンド) の外観と雰囲気は素晴らしいものでなければなりません。また、プレーヤーにとって満足のいく、魅力的なオンライン体験を実現するためには、ゲームがうまく動作する必要があります。そのため、最適化は非常に重要です。Elastic Games では、インテル® グラフィックス・パフォーマンス・アナライザー (インテル® GPA) を使用して、最大のパフォーマンス・ゲインが得られる領域を特定しています。」

インテル® GPA は、CPU、GPU、およびグラフィックス API パフォーマンスの情報をリアルタイムで提供します。Justin Vazquez 氏は、次のように説明しています。

「視覚化された情報から、特定の領域に注目することで、60FPS 以下の差をもたらす大幅なゲインが得られることが分かります。これは、プレーヤーの体験に対する投資対効果が最も大きな領域に集中する上で重要です。」

インテル® VTune™ プロファイラーと Unreal Engine* 4 の統合

Elastic Games は、『Last Year』のゲームプレイに Unreal Engine* を採用しています。インテルは、開発チームがハイエンドのマルチコア・プロセッサーの機能を利用できように、Capability Detect プラグイン (Github (英語) からダウンロード可能) を開発しました。プロセッサーの特性を検出してコードを適合させることで、ゲームを自動的に最適化して幅広いシステムで実行することができます。

これらの拡張により、開発者がエンジンで作業を始めた瞬間からゲームの可能性が広がります。

  • ユーザーのプロセッサーに応じてワーカースレッドの数を増やします。
  • クロス物理特性のスループットを向上します。
  • インテル® VTune™ プロファイラーの統合サポートを提供します。

リアルタイム解析により、インテル® VTune™ プロファイラーは、ゲームのパフォーマンスを容易に向上できるようにします。実行中のコードからデータを抽出して、画面に解析を表示します。例えば、次のビューポイントは、コード中の hotspot を識別して、各命令の動作に関するメトリックを提供します。

インテル® VTune™ プロファイラー
図 4. インテル® VTune™ プロファイラー (旧称: インテル® VTune™ Amplifier) は hotspot をランク付けして問題のあるコード領域を識別

ゲームの価値を高めるインテル® Game Dev Boost プログラム

Elastic Games は、『Last Year』の最初のリリースが「Runs Best on Intel」認定を取得した後、インテル® Game Dev Boost プログラムに参加しました。プログラムのメンバーとして、Elastic Games は e メール・キャンペーン、イベントデモ、ゲームバンドル、マーケティング機会を含む、5,000 ドル相当の価値があると推定される特典を利用できます。これらの特典は、混雑するビデオゲーム市場における競争力を高めます。

「インテルのようなパートナーと協力することで、より多くのゲーマーにリーチできるだけでなく、インテルが持つ信頼性の恩恵を受けることができます。人々はインテルを信頼し、その信頼に基づいて我々を信頼してくれるため、認定を得ることは非常に重要です。

我々は、インテルが提供するツールやその他の開発ツールで実現できる驚くべきことをすべて取り入れて、インテルとのパートナーシップによる成果を示し、ビデオゲーム業界に関する洞察を皆様に提供したいと考えています。」

今後の予定

2018 年 12 月に Discord から『Last Year』の Windows* 版が配信されました。2019 年 12 月には Stream 版がリリースされ、続いて Xbox One* 版と PlayStation* 4 版のリリースも予定されています。Elastic Games は、新しいコミュニケーション・パートナーと協力して、プレーヤーと潜在プレーヤーにリーチします。Justin Vazquez 氏は次のように述べています。

「顧客とプレーヤーベースに耳を傾けることは重要です。我々は、予想もしなかったものでプレーヤーを喜ばせたいと考えていますが、プレーヤーが望み、タイトルの自然な進化として期待するものから外れるつもりはありません。

『Last Year』は e スポーツ向けに設計されていませんが、プレイするのと同じくらい見るのが楽しいゲームです。e スポーツは素晴らしい媒体です。何時間もプレイして、思い出に残る瞬間を集め、編集してハイライトをまとめ、「私のラウンドではこんなにクレイジーなことがあったんだ。」と言うことができます。」

インテル® Game Dev Boost プログラムに参加して、エキスパートによるデモ、サンプルコード、ホワイトペーパーを活用してください。また、インテル® DevMesh (https://devmesh.intel.com/blog/557587/intel-gamedev-boost-certification-made-fast-easy-through-devmesh) に登録してゲームを送信すると、インテル® Game Dev Boost のプロモーションを利用できます。レベルは問いませんので、ぜひ参加してゲームの可能性を最大限に引き出してください。

コンパイラーの最適化に関する詳細は、最適化に関する注意事項を参照してください。

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