ハイパフォーマンス静音ワークステーションを自作する

その他

これまで iSUS 編集部では、いくつかのハイパフォーマンス自作シリーズを紹介してきました。

今年の夏は、オフィスに設置できるハイパフォーマンス静音ワークステーションの製作に挑戦してみました。市販されているインテル® Xeon® スケーラブル・プロセッサーを 2 ソケット備えるシステムは、静音性という観点からは受け入れがたいものがほとんどです。オフィスや自宅の作業環境に設置できる 2 ソケットシステムを第 1 の目標にしました。冷却には水冷システムを導入します。

オフィススペースに気軽におけるシステムを考えると、通常のラックマウント型のシャーシは設置に向いていません。そこで、デスクサイドに設置でき、SSI-CEB 以上のフォームファクターのマザーボードを格納でき、さらにプロセッサーの冷却対策をある程度柔軟に対応できるケースとして、Corsair 社の OBSIDIAN 1000D に決定しました。


ケース外観

このケースは、SSI-EEB や EATX までのフォームファクターのマザーボードを搭載できますが、ケース自体が幅 307mm、奥行き 693mm、高さ 697mm とかなりでかいです。おまけにケースの左右のパネルは強化ガラス製でケース自体の重量が 29.5Kg とかなりヘビー級です。実際宅配便のおじさんが一人で搬入できず、運搬をお手伝いしました。

次は使用するマザーボードですが、第 2 世代インテル® Xeon® スケーラブル・プロセッサーが利用でき、将来を考えてインテル® Optane™ DC パーシステン・トメモリーが装着できることを考慮して、ASUS 社のサーバー・マザーボード Z11PA-D8 を候補としました。ASUS 社には LGA3647 対応のワークステーション・マザーボードとして、WS C621E SAGE がありますが、こちらはインテル® Optane™ DC パーシステント・メモリーのサポートが明記されていませんでしたので候補から落としました。


マザーボード

使用する水冷ヘッドは、スロベニアにある Ekweb 社の EK-Annihilator Pro – Square ILM です。LGA3647 ソケットには Narrow と Square の 2 種類があるので、使用するマザーボードのソケットマウントに合わせて選択する必要があります。


水冷ヘッド

水冷ヘッドをネジ止めする部材は頑丈な金属製を選んだ方が良いでしょう。以前のLGA 2666 ソケットとは異なり、LGA 3647 ではソケットにプロセッサーを固定するロードバーやロードプレートがないので、クーラーや水冷ヘッドで固定する必要があります。マザーボードを立てた状態での固定は困難です。


ケースにマザーボードを装着

マザーボードを装着してみました。ケース内にはかなりのスペースが残されています。ここで、水冷の方式を検討します。ポンプとラジエーターを 1 つで 2 つのソケットを冷却するには不安が残ります。また、ラジエーターをプロセッサーごとに 1 つずつ用意してそれらを直列接続すると、ポンプの性能と寿命に不安があります。そこで、今回はソケットごとに個別の冷却を行うことにしました。


水冷ヘッドとラジエーター

導入した冷却システムはラジエーターとポンプが一体化された Alphacool 社の Eisbaer Extreme シリーズです。ラジエーターとポンプが一体化されていますが、いわゆる簡易水冷とは異なり、水冷ヘッドは別売であり自分で冷却水を注入する必要があります。

難点は、冷却水を注入するホールが写真の背面に 1 カ所しかなく、ハードチューブを使用すると冷却水の補充が困難であるため、ソフトチューブを使用せざるを得ないことです。しかし、ヘッドの位置とラジエーターの位置を決めてチューブを配管してしまえば、取り出して冷却水の注入やメンテナンスができます。

また、ラジエーターサイズが、385.5mm×156mm×64mm であるため、ケース内の設置位置がかなり限定されますが、今回選択した OBSIDIAN 1000D ではまったく問題がありません (ただしラジエーターを固定する際にネジ止めのホール位置が合わないため、穴あけの必要あり)。


内部の配管

ラジエーターはケース上面と前面に配置しました。ポンプが内蔵であるためケース内にはまだ十分な余裕があります。

ASUS 社のサーバー・マザーボード Z11PA-D8 には、サウンド機能がなく、グラフィックス・チップも搭載されていないので、Sound Blaster Audigy FX と GeForce GTX 1070 ビデオカードを装着しています。SSD は M.2 タイプのヒートシンク付きを導入しましたが、稼働後に確認すると SSD の温度が 55 度近辺になったため、別途 25mm ファンを SSD に装着しました (46 度まで冷却)。

冷却ラジエーターの FAN コントロールとポンプ・コントロール端子は、マザーボードに装着すると十分な回転数が得られなかったため、OBSIDIAN 1000D に付属する Corsair Link コントロール・システムに接続しました。

室温 27 度のアイドル状態のプロセッサー温度は 35 度前後、すべてのコアに負荷をかけても 60 度に達することはありません。前面に 12mm 吸気ファン 2 個、背面に 12mm 排気ファン 2 個を搭載していますが、運用時にほとんど騒音は気になりません。今回採用したプロセッサーは、マザーボードのソケットあたり最大 165W の制限から、インテル® Xeon® Platinum 8276 プロセッサーです。


完成したシステム

このケースには、mini-ITX のマザーボードと電源も同時に搭載することができるため、ケース自体はでかいですがデスクトップも 1 台減らせることを考えると大変使い勝手が良いです。おまけにケースサイドの強化ガラスは開け閉めできるためメンテナンスも容易です。

オフィスに設置できるハイパフォーマンス静音、おまけに美しいシステム。

皆さんもいかがですか?

iSUS 編集部

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